専務が私を追ってくる!




昨年、28歳の誕生日。

私は当時付き合っていた男に、突然別れを告げられた。

確か、表参道だった。

泣きたいくらいショックだったけれど、プライドの高い私は、都会の真ん中で無様に泣きわめいたり縋ったりはしたくなかった。

涙をこらえ、グッと喉に力を込め腰に手を当てて、「あっそ。別に私は構わないけど」というスタンスで言った。

「何も今日言うことないじゃない」

すると彼はそんな私に哀れむような目を向けた。

「その性格直した方がいいよ」

「はあ?」

「親切だと思って言うけど、美穂、すげー性格悪いからさ」

こんなことを面と向かって言われたのは、生まれて初めてだった。

“この私”をコケにされたような気がして、私の心は一気に沸点まで到達する。

何を言ったかまでは覚えていないけれど、私は都会の真ん中で泣かない代わりに、喚き散らした。

ある程度発散したところで我に帰って、ふと気付く。

行き交う人たちから向けられる好奇の目。

大好きだった彼も、私を蔑む目をしていた。

「ちょっとプライドが傷ついただけでこうなるんだ。みっともないね」

その場にいた全ての人が、私の敵だった。

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