専務が私を追ってくる!

私の心には、きっと鬼がいる。

鬼は私のことが大好きで、私を傷つけようとする者を容赦なく攻撃する。

そして、私がより好条件で生きていけるよう、根回しをする。

そのためには私より弱い者を見下したり、私に都合の良い嘘をついたりして、他人を傷つけることもいとわない。

心の中の鬼にチヤホヤされて、私は勘違いしていた。

自分は高貴な女なのだと。

とんだ裸の王様だ。

それに気付いたら、今まで自分の人生が幸福でなかった理由もだんだん見えてきた。

空虚な青春、希薄な恋愛、少ない友人、平穏が訪れないワークライフ。

見栄えとか体裁とか媚びとか損得勘定とか、そういうもの無しで人と笑い合ったことなんてあっただろうか。

私はもっと人と絆を育みたいと願いながら、自分以外の人間を大事にすることができなかった。

そしてどんどん孤独になっていった。

鬼をどうにかしないと、私は幸せになれない。

そう悟って、約一年。

現在に至る。

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