専務が私を追ってくる!

ぎゅうぎゅうに押さえ付ける訓練を積んだことによって、心の鬼は随分大人しくなった。

完璧とは言えないけれど、多少は人として成長したと思う。

新しい家族が2匹できた。

そんなつもりはなかったけど、新しい彼氏もできた。

だから私は、そろそろ次のステップに移行しなければならない。

今までは押さえ付けることしかできなかった鬼をコントロールするのだ。

そして、戦う時の力にする。

「美穂、本当にそれで行くの?」

この日の朝、修は私を見るなり驚いた顔をした。

「なによ、修くんだってこういう方がいいって言ってたじゃない」

「言ったけど……みんなビックリするよ」

開かずの間から取り出した、キャリア系ブランドの仕事着。

顔はメガネなしのフルメイク、髪も緩く巻いて飾り付きのコームで夜会巻きにした。

今までずっと避けてきた、去年までの仕事スタイルだ。

「これくらい気合い入れとかないと、今日の臨時株主総会は乗り切れない」

戦うなら戦闘服でないと。

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