専務が私を追ってくる!
この県の南部には、4つの市が存在する。
最も栄えている、県庁所在地のS市。
最近S市のベッドタウンとしての地位を確立したE市。
かつてはS市のベッドタウンとして栄えていたが、市全体の高齢化が進んでいるN市。
そして工業が発達しているW市。
東峰バス本社はN市にあり、従業員の多くはN市内に住んでいる。
N市、S市、E市には東峰バスのバス事業やホテルやショッピング施設などが展開されているが、W市には他社が2つも入っており、うちは展開していない。
そんな我が社の新専務取締役、雨宮修(30歳独身)の秘書に就いて、一週間が経過した。
私があの時の女だと気付かれたらどうしよう。
そうビクビクしながら働いているが、今のところ、全く気付かれている気配はない。
髪型やメイクなど、自分をキャラづけているもの全てを取り替えた甲斐があった。
それに加えて前に聞いた通り、彼は就任して以降非常に多忙で、ほとんど専務室にはいない。
電話で声を聞く機会はたくさんあるけれど、顔を合わせることは本当に少ないのだ。