専務が私を追ってくる!
ステレオから流れる洋楽が微妙な間を繋いでくれた。
赤信号で停車したのを機に、修が語りだす。
「俺も彼女いないんだ。だから母親が見合い見合いってうるさくてさ。面倒くさいから実家に住むのやめて、N市内にマンション借りた」
「そうでしたか」
彼女いないんだ。
ふーん。
別に、私にはもう関係ないけど。
「東京に好きな人がいるんだけど、俺がこっちに帰ってきたから離れてしまって。まあ、元々脈なんてなかったんだけど」
えっ、好きな人、いるの?
なんだ……いるんだ。
そりゃそうだよね、好きな人くらいいてもおかしくない。
正式な彼女じゃなくても、一緒に過ごす女が何人かいたっていいくらいの外見だ。
私とのことだって、所詮一晩限りのお遊びなんだし。
そういうお遊びができる男なのだと、私が一番よくわかってるし。
自分が好きになったからって、一体何を期待していたんだろう。
やだやだ、胸が痛い。
あの日、修を誘ったのは私だ。
修は私の希望を叶えてくれた、いわば親切な人だ。
ムード作りも、ベッドでの振る舞いも、申し分なかった。
おかげで素敵なラストナイトになった。
でも、どうしてだろう。
今になって、すごく虚しい……。