専務が私を追ってくる!
今の生活を始めてからは、給料は前職より少し減って、生活費は以前の実家生活の何倍もかかっている。
そのはずなのに、お金は前より余るようになった。
きっと以前の私が、衣類や装飾品、それからサロンや化粧品に使いすぎていただけである。
無駄遣いがなくなったし、これでいい。
だけど……。
たまには華やかな格好が似合うことを確認したい。
今日は本来、そのための解禁日だったのだ。
着替えを終えて、鏡の前に立つ。
白とブルー系でまとめた、ベーシックでコンサバティブな装い。
ここで初めて、ヴィヴィッドオレンジのパンプスが妙に浮いていることに気付く。
靴のこと、忘れてた。
靴まで新調すると荷物になるし、もうこのままでいいや。
卷いた髪をゴムでひとつにまとめ、クレンジングシートでアイメイクをキレイに落とすと、華やかだった私が半分ずついなくなる。
解禁日、終了。
目元のファンデーションを直したら、最後にメガネを装着。
会社にいる時と変わらぬ私の完成だ。
着てきた服を畳んで、ランジェリーショップの紙袋に収め、ちゃんと隠しておく。
下着を購入したときは、紙袋の中身が見えないよう、布のような紙地で包んでくれる。
それが役に立った。
一息ついて、発信。
「もしもし、郡山です。今ウォークシティにいるのですが、専務はどちらにいらっしゃいますか?」