専務が私を追ってくる!
修に待ち合わせ場所として指定されたのは、私がさっきランチを食べたカフェだった。
店に入ると、ランチのときに私を迎えてくれたスタッフが対応してくれたが、2時間前にも来た客だとは気付いていない様子。
私も初めて来ましたというふうな態度で歩みを進め、窓際のカウンター席に座る修の背中に声をかける。
「お待たせしました、専務」
すると彼は肩をビクッと震わせ、こちらを向いた。
「おわっ、ビックリした。後ろ姿なのに、よく俺だってわかったね」
しまった。
私は既に彼の今日の服装を知っていたから、迷わず声を掛けてしまった。
初めて見たフリをしなければいけなかったのに。
「この店に一人でいらしている男性は、専務だけでしたから」
「ああ、なるほど。確かにね」
何とか自然な理由を見つけることができた私は、とりあえず彼の左に着席。
アイスティーを注文して、ブランドバッグと紙袋は足元へ。
「それで、今日はどちらへお付き合いしましょうか」
私が尋ねると、修は開いたおさむ帳の上にボールペンを置いて、頬杖をついた。