専務が私を追ってくる!
「実はオヤジ……社長に、ブランド誘致の案を出せって言われてさ」
面倒くさそうにフロアガイドとノートにメモをしてある『他の施設にない有名ブランド』という文字を見比べている。
どうやら来年秋の改装に向けての会議で提案されるようだ。
「そういうのは、ウォークシティ事業部がやるのでは?」
「もちろんそうなんだけど、まともな案が出せるくらい勉強しろってことだと思う。それに、俺はN市にも似たような施設を作りたいから、そのための秘密の調査も兼ねて、近隣の商業施設を回りたい」
なるほど、だから私に白羽の矢が立ったのか。
休みだというのに、熱心だな。
こんなだから、彼女ができないのだ。
そういえば、東京の女とはどうなったんだろう。
東京出張の度に連絡を取ったりしているのだろうか。
「だからって、私でお役に立てるのでしょうか。なんていうか、その、ファッションとかそんなに詳しくないですし」
興味がないわけではないが、偏っていると思う。
「かもしれないけど、レディースのことは男の俺より詳しいでしょ」
「それはそうですね」
「ていうか、男一人で女物の売り場をウロチョロしてると変な目で見られるから、一緒に歩いてくれるだけでも助かる」
確かに、さっき見かけたときも目立ってたもんな。
「承知しました」