専務が私を追ってくる!

私たちはトーホーウォークシティと、その他S市内の大型商業施設のレディースフロアを3つほど回った。

メンズフロアやその他の売り場は、既に一人で回ってしまっているらしい。

見て回っている間、

「ねぇねぇ、郡山さん。制服やめて、こういうの着て仕事しない?」

などと言って店の中にまで入ろうとするから参ってしまった。

自分が買うからとでも言い出しそうな勢いだった。

「結構です。私は制服が好きなんです」

断る度に口を尖らせる修を先導するように、早歩き。

「郡山さん、速いよ」

「私の仕事着を探しにきたのではありません」

「ちぇー」

諦めたかと思えば1階の化粧品エリアで

「ねぇねぇ、一回やってもらってみてもいいんじゃない?」

などと言い出す始末。

「嫌です。このエリアはにおいが苦手なので早く出ましょう」

再び口を尖らせているが、知ったこっちゃない。

絶対にこいつの前でメガネを取られてなるものか。

各ビル一通り回っては、こっそりおさむ帳にメモをするため、階段の踊り場へ入る。

最後のビルの踊り場にはベンチが用意されていて、歩き疲れた私たちは、二人して唸りながら腰を下ろした。

「もう歩けない。俺もオッサンになったなって思った」

「私もです」

久しぶりのピンヒールなのに歩きまくって、足がジンジンする。

修がメモをしている間、私は靴を脱いで足をブラブラさせ、少しでも疲労を回復させようと努めた。

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