専務が私を追ってくる!
修は期待を含めた瞳で、まっすぐ私を見つめている。
見つめ合うと、あの夜を思い出して照れてしまう。
わたしは視線を逸らし、前方を向いて、遠慮がちに語った。
「テレビや雑誌ではよく取り上げられているのに、この地域にはないファストファッションブランドが2つあります」
具体的に二つの名前を挙げると、すかさずおさむ帳にメモが取られる。
「知ってはいるけど、確かにないね」
「行きたいと思って調べてみたことがあるんですけど、隣接県を含めて、この辺りには一店舗もありませんでした。客層や価格帯を考慮しても、誘致するなら……」
「うち、だね」
「はい。どちらか一つでも入れば、改装の目玉になるのではないでしょうか」
これで、もし本当に今上がっている店が入ったら、すごいな。
私はそう思いながら、彼と階段の踊り場でウォークシティについて語り合った。
おさむ帳がどんどんインクで染まっていく。
○印の中に「こ」と書かれているポイントは、私のコメントをメモしたものらしい。
郡山の「こ」ということか。
その法則で考えると、○印に「父」は社長のコメントだろう。