専務が私を追ってくる!

全身の血液が逆流したかと思った。

寒くもないのに手足の先や頭から血の気が引いていく。

修は私の正体に気付いていたのだろうか。

「専務……放してください」

顔を見られたくなくて、俯いた。

怖くて彼の顔を見ることができない。

「俺が気付いてないと思ってんの?」

「な、何にですか?」

我ながら白々しい。

でも、そのシラを切り通したい。

キュッと、腕を掴む握力が強くなった。

敏感に反応してピクリと震える。

「郡山さん、いつも可もなく不可もない雰囲気を醸し出して、地味な感じで仕事してるけどさ。本当はもっときらびやかなタイプだよね」

……え? それのこと?

あの夜のことじゃなくて?

よかった。

まだ辛うじてバレてはいないらしい。

「そんなことないですよ」

「あるでしょ。グッチのバッグ、フランクミュラーの時計、ジミーチュウの靴……。仕事の時はそんなブランドもの、身に着けてないじゃん。結んでたからすぐには気付かなかったけど、髪も巻いてるよね」

甘かった。

服とメイクでごまかせると思ったのに。

バッグや時計は目に入るものだけど、脱いでる靴のインソールまでチェックしてたなんて。

目ざといにも程がある。

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