専務が私を追ってくる!
修は私を信用している証に、おさむ帳の中身を見せてくれた。
だから私にも見せろというのか。
彼にだけは隠していたい、私の正体を。
「私だって、専務のことを信頼しています。でも、だからって何もかもをさらけ出す勇気はありません」
修は申し訳なさそうな顔をして、少しだけ微笑んだ。
「うん。わかった。今日は帰ろう。バスで来たんだよね。家まで送るよ。それくらいならいいでしょ?」
「……はい。ありがとうございます」
どちらからともなく、歩き出す。
駐車場へ向かうエスカレーターで、修がぽつりと呟いた。
「前にどこかで会ったことがある気がするのは、隠された方の郡山さんなのかな」
私は聞こえなかったふりをして、交差したエスカレーターの隙間からフロアを眺めることに集中した。
左肩に抱えている紙袋が、やけに重たく感じられる。
もしいつか私の正体に気付いたら、修は一体どう思うのだろう。
『郡山さんのこと、信用してるんだ』
この言葉は撤回されるに違いない。