専務が私を追ってくる!
5月中旬に差し掛かった。
我が東峰バス株式会社は、修を専務に迎えた新体制での業務が本格的に走り出している。
スケジュール管理、定期的なメールチェック、名刺の整理とデータ処理、礼状の作成、提出された領収書の処理、出張のための宿および各種チケット取得。
4月の間は暇だったけれど、あっという間に忙しくなってしまった。
これから2時間以内に頼まれた資料をまとめてメールで送信しなければならないのに、取引先から次々メールが入ってくる。
そのチェックと転送をやろうとパソコンに向かうと、電話までかかってきた。
ディスプレイで発信者をチェックすると、『社長携帯』と表示されている。
「専務室、郡山でございます」
『美穂ちゃん、ご苦労さん。うちのバカ息子、今どこにいる?』
「お疲れ様です、社長。専務なら現在、東京におります」
『東京?』
「ええ。東京行き夜行バスを共同運行している会社と旅行会社との打ち合わせです」
『ああ、安全マニュアルの見直しと、旅行商品を作るって張り切ってたやつか。いつ帰ってくる?』
手帳を取り出し、到着時刻をチェック。
「明日の夜行バスに乗って、明後日の朝7時半に1階のターミナルに到着予定です」