専務が私を追ってくる!
『夜行バス!?』
社長はよっぽど驚いたのか、電話越しにむせているのが聞こえた。
驚くのも無理はない。
普通、出張なら平社員でも飛行機や新幹線を利用する。
ましてや修は専務なのだ。
「はい。東京出張の際は、時間が許す限り、夜行バスを利用しています」
『飛行機、使っていいんだよ?』
「私もそう申し上げたのですが、浮いた経費を接待費に回すと……」
『まあ、自社の夜行バスなら、タダだもんね』
「はい。軽く7万は浮きます」
修は往路も夜行バスに乗って行った。
専務室には腰やら首が痛くなるからといって準備した腰用クッションとネックピローを保管する場所が確保されている。
毎度万全の体勢で乗っているにもかかわらず疲れてしまうようで、
「夜行バスで旅行商品を作るついでに、寝心地の良い最新シートに変えてやる!」
と意気込んでいる。
そしてその稟議書を作るための資料を、今私が作成しているのだ。