専務が私を追ってくる!



私は信用されるに値する人間ではない。

善良な人間は、嘘をつくことに罪悪感を感じるのだという。

しかし私は、物心がついて以降、自分の名誉や見栄、保身のために平気で嘘をついて生きてきた。

幼稚園の頃は持ってもいないおもちゃを自慢した。

小学生の頃は話題の中心になるために、嘘の噂話をバンバン流した。

中学生になると、大人びて見られたくて、校外に年上の彼氏がいるふりをした。

高校生になってもその悪癖は治らなかったが、本当に好きな男の子が出来た時は、彼氏と別れて寂しいと言って、気を引くのに使った。

自分を繕うために嘘をつくことが当たり前になりすぎて、もう自分でも何が本当で何が嘘か覚えていない。

私の青春は、嘘だらけで空っぽだ。

キラキラした思い出など何もない。

それが嘘の代償だと気付き、今になって心が痛む。

この世はうまくできている。

やはりズルいことなどしてはいけない。

不格好でも真摯に取り組んだ者にこそ、最高の祝福が与えられるのだ。

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