専務が私を追ってくる!



翌々日、朝。

私が出社すると、1階のバスターミナルから直接ここに上ってきたと思われる修が、魂の抜けた顔で自分のデスクに突っ伏していた。

夜行バス用のクッションが今、デスクで役に立っている。

「おはようございます、専務」

「おはよー……」

そんなに疲れるのなら、夜行バスでの移動などやめてしまえば良いのに。

「お疲れのようですね。会議まで時間がありますし、このままお休みになられては? 時間が来たら起こしますよ」

「いや、疲れちゃいないよ。夜行バスにも慣れたもんで、ぐっすり眠った」

だったらどうしてそんな顔をしているのか。

口に出してはいないが、疑問は私の表情からしっかり伝わったらしい。

修はピンク色のクッションに顎を乗せてポツポツ話し出す。

「前にさ、言ったじゃん。東京に好きな女がいるって」

「はい。聞きました」

脈がないとも言っていたっけ。

いよいよもって振られてしまったのだろうか。

「頑張ってみてるんだけど、全然会えないんだよ」

それでヘコんでいるというわけか。

「諦めろということでは?」

「簡単に言ってくれるね。他人事だと思って」

「他人事ですもの」

「冷たいな」

< 71 / 250 >

この作品をシェア

pagetop