専務が私を追ってくる!
翌々日、朝。
私が出社すると、1階のバスターミナルから直接ここに上ってきたと思われる修が、魂の抜けた顔で自分のデスクに突っ伏していた。
夜行バス用のクッションが今、デスクで役に立っている。
「おはようございます、専務」
「おはよー……」
そんなに疲れるのなら、夜行バスでの移動などやめてしまえば良いのに。
「お疲れのようですね。会議まで時間がありますし、このままお休みになられては? 時間が来たら起こしますよ」
「いや、疲れちゃいないよ。夜行バスにも慣れたもんで、ぐっすり眠った」
だったらどうしてそんな顔をしているのか。
口に出してはいないが、疑問は私の表情からしっかり伝わったらしい。
修はピンク色のクッションに顎を乗せてポツポツ話し出す。
「前にさ、言ったじゃん。東京に好きな女がいるって」
「はい。聞きました」
脈がないとも言っていたっけ。
いよいよもって振られてしまったのだろうか。
「頑張ってみてるんだけど、全然会えないんだよ」
それでヘコんでいるというわけか。
「諦めろということでは?」
「簡単に言ってくれるね。他人事だと思って」
「他人事ですもの」
「冷たいな」