専務が私を追ってくる!
「連絡先すら知らないのにバカじゃないのって思ったでしょ」
ギク。
「思ってませんよ」
「いや、思ったでしょ。俺だってバカだと思うもん」
ああ、なんだ。
わかってるんだ、良かった。
本物のバカだったらどうしようかと思った。
「連絡先どころか名前も知らないからね。救いようがないよね」
「はあっ? 名前も知らないのに、好きなんですか?」
しまった、思わず『はあっ?』とか言ってしまった。
ダメだ、これは。
完全に一方通行だ。
早く諦めた方がいい。
自分でわかってるみたいだけど、バカだ。
「うん。今はもう、付き合おうとかって考えてるわけじゃないよ。ただもう一度会いたいだけで」
「よっぽど素敵な人なんですね」
私がそう言うと、修はクッションに乗せていた頭をゆっくりと起こした。
そして椅子の背もたれにググッと背を預け、天井に彼女を映し出すように視線を上へ。
「ああ、そうだね。明るくて可愛くて、でも色気もあって。それで……すげー酷い女だったよ」