専務が私を追ってくる!
「行ってらっしゃいませ。お気をつけて」
「ありがとう。一応伝えとくんだけど、月曜の朝に帰ってくる予定」
「土日は東京で過ごされるんですか?」
「うん。彼女との決着、付けようと思って」
いつもより長い旅になるからか、スーツケースがいつもより膨らんで見える。
連絡先どころか名前さえ知らない彼女とは連絡さえ取れないのに、一体どうやって決着をつけるのだろう。
私の疑問は、やっぱり顔に出ていたらしい。
「今回彼女に会えなかったら、諦める。母親の言う通り、見合いでも何でもするよ」
眉を下げて微笑んだ修。
彼の表情を見ると、私まで切なくなってきた。
彼はきっと、彼女には会えない。
そして彼自信、それをわかっている。
つまり修は、彼女を諦めるために土日を過ごすのだ。
「そう、ですか」
「郡山さん、俺が超一方的な片思いしてるって思ってるでしょ」
「えっ……違うんですか?」
「俺、彼女と何もなかったわけじゃないんだよ」
「どういう意味ですか?」
「簡単に言えば、した。もう何ヶ月も前だけど。俺は彼女に誘われて、して、でも逃げられたんだ」