専務が私を追ってくる!

この日はそれ以降の仕事が捗らず、着替えて更衣所を出たのは夜10時前だった。

いつもの仕事をしただけなのに、クタクタに疲れている。

この時間、もう江森西へ行くバスは出ていない。

駅まで行ってタクシーを拾おう。

そう考えながらエレベーターを待っていると。

「あれ、郡山さん?」

声がした方に顔を向ける。

社長秘書の園枝さんだった。

「お疲れ様です。園枝さんも残っていらしたんですか」

「はい。明日、ウォークシティ事業部との会議があるんですけど、そのための準備に手間取ってしまいまして」

「ああ、来期のテナント入れ替えの」

「そうです」

先月の解禁日のことを思い出して、ジンと胸が熱くなった。

あの時の私の案と修が作成した提案書が、少しでも役に立ちますように。

「郡山さんは、こんな時間まで何を?」

「仕事が捗らなくて。5月病でしょうかね」

「ははは、そうかもしれないですね」

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