専務が私を追ってくる!

「専務。私たち、もっと大事なことを話し合うべきだと思います」

「もっと大事なこと?」

「私たちの、これからのことです」

私たちは現状、専務とその専属秘書。

過去に何があったからといって、それが変わるわけではない。

もしこのことで私に対する信用がなくなったというのなら、私を解任するとキッパリ言ってもらわねばならない。

このまま秘書を続けていいと思っているのなら、お互いにどう接していくのかハッキリ決めておかなければならない。

「これからのこと……ね」

修は足を組み替えて、何本目かのタバコに火をつけた。

吐き出された香ばしい煙が、キラキラとスポットライトに向かって上っていく。

ワイン・クーラーを一口。

私の心臓は落ち着いたリズムを刻んでいるが脈は強くて、グラスを手にしていると水面が脈打つ。

もう一口飲んでグラスをコースターへ戻す。

その様子をじっと見ていた修が、告げた。

「今夜泊まる部屋、夜景がすっげーキレイなんだ」

「え?」

「よかったら、遊びに来ない?」

彼はわざと、あの時の私のセリフを選んでいる。

「何言ってるんですか」と笑ってツッコもうとしたが、それを遮るように手を握られる。

彼の瞳にはあの夜以上の色気が宿っており、笑ってごまかしても無意味なのだと瞬時に察した。

「それって、そういう意味で誘ってる……んですよね?」

「そうだよ」

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