専務が私を追ってくる!
ホテルの部屋の扉が閉まった瞬間、修は明かりも点けずに私に口づけた。
夜景を臨める暗い部屋の大きな窓ガラスは、雨に濡れて幻想的な光を放っている。
「専務、ちょっと待って……んっ」
私の言葉は彼の舌に奪われ、身体は彼の腕に囚われた状態でぐいぐい後方へ押し込まれる。
何かに足が引っ掛かり、その弾みで体が傾いたが、転倒する前に体がバウンドした。
ベッドだ。
「やだよ。待たない。これからのことは、全部あんたが決めればいい」
「え?」
覆い被さる修の顔が、窓からの微かな光で妖艶に照らされている。
ドキドキしすぎて視界まで揺れる。
全身が、熱い。
「秘書を続けたいなら続ければいい。やめたいならやめればいい。セクハラで訴えたければ一緒に弁護士を探してやる。ていうか、この状況が嫌なら、俺を殴って逃げなよ。チャンスは十分に与えているつもりだ」
「そんな言い方、ズルいです」
私が逃げなかったこと、拒絶していないことを、修はちゃんとわかっている。
「ズルいのは正体を隠してたあんたの方だろ」
「それはっ……」
本当に、その通りだ。