専務が私を追ってくる!
修のキスが色気を増してきて、私の心と身体はふやけていく。
気付けば腕を彼の背中に回し、懸命に応えている有様だ。
恋愛禁止。
当然、こういう行為も含めて。
本当は拒否しなければならない。
だけど『今日は解禁日だ』と言った彼の言葉が、私に魔法をかけた。
『今日はいいんだ』という意識が、私の固い決意を溶かした。
2ヶ月弱、ともに働いてきた絆なのか。
それともこの期間で成長した恋心のせいなのか。
雨宮修という男を知った私は、あの夜以上に、彼を愛しく感じる。
脱がされていく服の擦れる感覚にまで、感じてしまう。
「ちょっと痩せたね」
「あんまり見ないでください」
「敬語はやめよう。専務とも呼ばないで。今日は仕事じゃない」
秘書としての仮面まで剥がされて、身も心も丸腰だ。
「あっ……ダメ。ねぇ、ダメ」
与えられる快感にたまらず漏れる甘い声。
「そんな声でダメって言われて、やめるヤツなんていないよ」
好きな人にそんなところを触られて、こんな声が出ない方がおかしい。
私の身体はバカみたいに水気を帯びていて、もういつでも彼を迎えられる状態だった。
だけど修は必死に、容赦なく、私だけを快楽の底に落とし続けた。
逃げられないくらい、クタクタにするつもりなのだ。
結局彼とひとつになったのは、私が泣きながら
「もうして。早く、して」
と無様にねだってからだった。
修はそんな私を見下ろして満足そうに笑っていた。
何度か繰り返した事の後、私は修の期待に沿うような形で、彼より早く眠りに落ちてしまった。
その直前。
「おやすみ、美穂」
そう言ってそっと髪をかき上げ額にキスをした修の優しい顔を、私は一生忘れないだろうと思う。
この夜、私は確かに幸せだった。