専務が私を追ってくる!
東京から帰ってきた翌日、月曜日の朝のことだ。
エレベーターで社長と一緒になった。
「おはようございます、社長」
いつものように挨拶をすると社長はにっこりと笑って言った。
「おはよう美穂ちゃん。今日はなんだかいつもより肌つやがいいね。エステにでも行ったの?」
社長は私の変化に目ざとい。
この間も、美容院で少しだけ髪を切り根元を染め直しただけなのに、すぐに気付いてくれた。
修は全く気付いていなかったようだけれど。
「いいえ。エステなんて、もう何年も行ってません」
社長が指摘した通り、今日の私は何となく肌の調子がいい。
洗顔をしたときやメイクをしているとき、自分でもそう感じた。
だけど他人である社長にそれがわかるなんてスゴい。
というより、ちょっと怖い。
「じゃあ、彼氏でもできたのかな」
「えっ……」
ドキッとして言葉に詰まってしまった。
社長にとっては何気ない冗談だったのだろうが、今の私には簡単に笑って流せない理由がある。
まさか「おたくの息子さんとベッドインしました」とは言えないのだ。