専務が私を追ってくる!
「あれ、図星?」
社長が嬉しそうに微笑む。
「まさか。変わらず独り身ですよ」
事には至りましたが付き合ってはいません。
専務と秘書という関係を維持することで合意しています。
ご安心ください。
社長は「取引先の将来有望なメンズを紹介しようか」とか「いっそのこと修はどうだ」とか、色々世話してくれようとする。
私はそれを丁重にお断りして、専務室に入った。
照明を点け、窓を開けて空気を入れ替える。
埃が溜まりやすいところをササッと掃除をして、パソコンのスイッチを入れた。
ガチャ
扉が開く音がした途端、胸が跳ねる。
ここをノックなしで開いて良いのは、私の他にはもう一人しかいない。
開いた扉から、スーツをスマートに着こなした修が入室。
いつも通り、いつも通り……。
自分に言い聞かせるが、意識しないなんて無理だ。
嘘をついていた気まずさと、欲を交えた照れ臭さが混じる。
「おはようございます、専務」
「おはよう」
スーツの修、メガネの私。
見た目は何も変わっていないのに。