専務が私を追ってくる!

かつて私が勤めていた大手企業の秘書課は、嫌な女の巣窟だった。

この秘書課にはおおかた、事務上がりの、まあまあ美しくて気が強く、プライドの高いタイプの女が配属される。

女の人数は5〜6人。

必然的に、課内には熾烈でドロドロした女の戦いが常在した。

そしてその戦いの優劣で、ざっくり勝ち組と負け組に分割される。

負け組の仕事は、主に雑用だ。

具体的に述べると、勝ち組がさも自分たちが淹れたような顔で振る舞うお茶を淹れたり、勝ち組がさも自分が作ったような顔で配布する資料の作成。

勝ち組はいいとこ取りするばかりで、やけどをするのも紙で手を切るのも負け組だ。

イベントの手伝いにしても、華やかなパーティーの手伝いは勝ち組の仕事で、負け組は葬儀や屋外の仕事ばかり押し付けられる。

私たちの戦いは、秘書としてどれだけ優秀かというよりも、女としてどれだけ優れているかが勝負を左右した。

頭のてっぺんから爪の先まで美しく手入れされ、上質な衣類に身を包み、ミスをしない。

そういう女が力を持つシステムが巧妙に確立されていたのだ。

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