桜舞う季節に ー君が教えてくれたことー
病院に着いて、
沙耶に案内された霊安室に
涼は眠っていた。
私が手を握っても、
その冷たい手が私の手を
握り返してくれることはなかった。
「涼……っ、涼!」
ここでやっと、涙が溢れた。
私の肩に、沙耶が手をおく。
「絢香と映画を見に行くって言って、
家を出ようとしたときに
倒れたんだって。
それで……」
その先は、もう聞きたくなかった。
「そう、なんだ………」
涼。
この前まで、元気だったじゃん。
なのに、何で急に
こんなことになっちゃうの。
涼は、今にも
目を覚ましそうなのに。