桜舞う季節に ー君が教えてくれたことー
そして、制服のポケットから
何かを出すと、私に差し出した。
「これ。涼からの、手紙」
「え?」
「これね。涼の机の引き出しに
入れてあったんだって。
私の分と、絢香の分と、
涼のお父さんの分があったって」
涼が、亡くなる前に
手紙を書いたの?
私に?
「ありがとう、沙耶」
沙耶はにっこり笑うと、
私をひとりにしてくれた。
多分、沙耶は
私がひとりになりたいと
思ってたことを
分かってくれたんだと思う。
“絢香へ”
封筒にかかれた、きれいな字。
涼みたいに、優しい字。
私はゆっくり封筒を開いた。