桜舞う季節に ー君が教えてくれたことー


私が謝ると、

涼は寂しげに、

にっこりと笑った。



「いいよ、別に。

 絢香の親は?」

急に名前を呼ばれて、

私の心がドキッと高鳴る。


「うちの親は、

 仕事が忙しくて…

 あんまり病院に来れないの」


「そうなんだ」


私は昔から、他の家の子は

当たり前のように毎日会える

お母さんとお父さんに

なかなか会えないことが、

寂しくて。


お母さんとお父さんに何度も

“嫌い”って言ってしまった。


私は不幸だってずっと思っていた。



でも、違う。


お母さんとお父さんがいる

っていうこと自体が、

大きな幸せなんだね。
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