キスから始まる方程式
「七瀬待てよっ」
桐生君の制止の声にも耳を貸さず、無言で歩き続ける私。
そんな私の隣に、桐生君が小走りで追いついてきた。
「なぁ。そういえばお前がこの前買ってた、俺用のビターチョコってどうなったんだ? 俺お前からまだ貰ってないけど」
「ビターチョコ……。あっ……!」
完全に忘れてた……。
「まさか忘れてたとかって落ちじゃねーだろうなぁ」
桐生君が訝しげに横目で私をねめつける。
「あ、あはは、そんなことないよ……」
確か鞄の中に入れてあったはず……。
「そういえばさ、桐生君は昨日何個くらいチョコ貰ったの?」
気まずさと桐生君の気を紛らわすため、適当な話をふりつつ慌てて鞄の中をゴソゴソと手さぐりで探す。
きっと桐生君のことだから、両手に抱えきれないほどたくさん貰ったと自信満々に答えるだろう。……と、そう思っていたのだが……