キスから始まる方程式


翔っ!



ドキン



今までどんよりと沈み切っていた心が、翔の姿を見た途端急に晴れ間がのぞいたように明るくなる。


鈍かった鼓動も急激に跳ね上がり、全力稼働状態だ。



ちゃんと謝らなくちゃ!



結局あれからすれ違いばかりで翔に会えなかった私は、今がチャンスとばかりにギュッと拳に力をこめ、翔の名前を口にした。



「かけ……っ」



のだが……。


凍りつくような冷淡な目で私を一瞥した翔は、まるで避けるかのように視線を反らし自分の教室へと足早に入って行ってしまった。



翔……?



予想外のことに、そのまま凍りついたように呆然と立ち尽くす私。



ちゃんと目が合ったから、私に気付かなかった……わけじゃないよね……。



ドクン……ドクン……



先程までとは違う『不安』という名のダークブルーな感情が、一瞬にして私の全身を覆い尽くした。
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