キスから始まる方程式


ザンッ……ザンッ……



ほとんどの生徒が帰宅し静寂に包まれた校内に、かすかに響く聞き覚えのある物音。



あれ……? この音……。どこかで聞いたことあるんだけどなんだっけ……?



校門へ向かっていた私は急遽進路を変え、まるで導かれるかのように、その音を辿り歩を進めて行く。


しかし行き着いた先は、誰もいないはずの校庭。



おかしいな。こんな時間に校庭から音なんてするはずないのに……。



不審に思いつつ、改めて暗闇に覆われた校庭を凝視する。


すると……



「っ!」



おぼろげな月明かりに照らされ私の瞳に映ったのは、校庭の片隅でたったひとり黙々とゴールへ向かってボールを蹴り続ける翔の姿だった。

< 150 / 535 >

この作品をシェア

pagetop