キスから始まる方程式
ザンッ……ザンッ……
ほとんどの生徒が帰宅し静寂に包まれた校内に、かすかに響く聞き覚えのある物音。
あれ……? この音……。どこかで聞いたことあるんだけどなんだっけ……?
校門へ向かっていた私は急遽進路を変え、まるで導かれるかのように、その音を辿り歩を進めて行く。
しかし行き着いた先は、誰もいないはずの校庭。
おかしいな。こんな時間に校庭から音なんてするはずないのに……。
不審に思いつつ、改めて暗闇に覆われた校庭を凝視する。
すると……
「っ!」
おぼろげな月明かりに照らされ私の瞳に映ったのは、校庭の片隅でたったひとり黙々とゴールへ向かってボールを蹴り続ける翔の姿だった。