キスから始まる方程式
「う゛っ! い゛ででっ!」
途端に桐生君の腕が私から離れ、寝ぼけまなこだった目が覚醒したかのようにカッと見開かれる。
その隙に私はようやく自由になった体を起こし、めくれ上がったスカートの裾を手早く整え直した。
「あ……れ? 七瀬、なんでこんなとこにいんだ? ……ってか俺、なんでこんなに手がいてぇんだ?」
切れ長の瞳をパチパチさせながら、桐生君が不思議そうな顔で私と自分の手の甲を交互に見つめている。
え……? さっきのあの大胆破廉恥行動、桐生君覚えてないの!?
桐生君は頭の上に“?”マークを浮かべながら、私がつねった手の甲をいたわるようにフーフーと息を吹きかけている。
どうやらあの行動は確信犯的な行為ではなく、夢うつつ状態で本当に寝ぼけての所業だったらしい。
そうとわかった私は、あえて先程の件には触れず、話を先に進めることにした。