キスから始まる方程式
「ねぇ桐生君、なんでこんなところで寝てたの?」
「なんでって……。お前こそこんな朝っぱらからどうしたんだよ。 学校に行くにしちゃまだ早いだろ?」
「う……っ、そ、それは……」
質問を逆に質問で返されて、おもわず怯む私。
桐生君が止めるのも聞かずに目の前で勢いよく指輪を捨ててしまった手前、まさかその指輪を探しに来ましたなどと、おいそれと話すことなどとてもできなかった。
「えっと……あの……その……」
「…………」
何も言葉が浮かんでこず、草むらに座り込んだままオロオロと口ごもる。
そんな私を黙って見つめていた桐生君が、おもむろにコートのポケットに手を突っ込み何かを取り出した。
確認するように一度手の平に乗せ目を落としたかと思うと、グッと握りしめ私の手の中にそれを押し込めてきた。