キスから始まる方程式
「桐生君……これ……っ」
驚きに震える手を抑えながら、巾着状の小さな袋の口を緩め中の物を取り出す。
かじかんで感覚が鈍くなった私の手の平に、見慣れた指輪がコロコロと転がった。
「もしかして……一晩中この指輪探してくれてたの……?」
「ん? いや、その……まぁ……な」
「っ!」
ズズッと鼻をすすりながら、ばつが悪そうに視線をそらし桐生君が答える。
私なんかのために……、こんな寒い中頑張ってくれたの……?
よく見ると、桐生君の制服やコートが、ところどころ泥で汚れている。
これほどの寒さと視界が悪い中、広い草むらの中からこんな小さな指輪を見つけ出すのは容易ではなかっただろう。
そう思った瞬間、私の胸がジンッと熱くなり、気が付くと桐生君の頬へと右手が伸びていた。