キスから始まる方程式
先日の指輪の一件でさすがに罪悪感を感じていたところ、ちょうど桐生君が昼食はいつも購買のパンを買って食べているということを知り、それならばとお礼とばかりにお弁当を作るに至った次第である。
「よし、できたっ」
私は赤、桐生君のは青いチェック柄の洗い立てのナプキンにキレイにお弁当箱を包み、目の前に並べて置く。
桐生君、喜んでくれるかな……。
「……って、私ってば何考えてんの!? 単なるお礼なんだから、べつに桐生君が喜ぼうが、そうじゃなかろうが関係ないじゃんっ」
ガシガシと両手で頭をかきむしりながら、否定するように大きくかぶりを振る。
「っと! やばっ、もうこんな時間! 私もそろそろ出かけなくちゃ」
ふと柱の時計に目をやると、すでに時刻は八時をまわっていた。
慌ててお弁当を手さげに入れ、出かけるしたくを整える。
そのままバタバタと玄関へ向かうと、誰もいなくなった家に「いってきま~す!」の挨拶と施錠を施し、足早に家を出たのだった。