キスから始まる方程式
「んもうっ! 高木先生ってば、なんでこんな日にかぎって呼び出すのよ~っ」
その日の昼休み。
突然バレー部顧問の高木先生に校内放送で呼び出された私は、今しがたその用事を無事済ませ桐生君との待ち合わせ場所へと急いでいるところである。
顧問の高木先生は体育教師で、普段から空き時間は職員室ではなく体育教官室にいることが多い。
しかもその体育教官室が教室から遠く離れた体育館脇にあるため、用事があって急いでいる私にとっては迷惑なことこのうえない。
「っだ~っ……もうこんな時間! 桐生君怒ってるかな~……」
先を急いでバタバタと渡り廊下を走っていると、桐生君がお腹をすかせてむくれている様が目に浮かんできた。
「そ~おだっ! 裏庭突っ切っちゃえば、管理棟まで超近道じゃ~ん! 私ってばナ~イスッ!!」
今履いているのはもちろん屋内専用の上履きだが、この際そんなことにかまってはいられない。
多少罪悪感は感じるもののモラルより時間を優先した私は、そのまま進路を外れ上履きのまま屋外へ駆け出し、中庭に続く道へと進入した。