キスから始まる方程式
「風間君、やっぱり私のことなんて好きじゃないんでしょ?」
「そ、そんなこと……ねぇよ……」
「っ! うそ! 絶対そんなの嘘だよっ」
「南條……っ」
どうやら、翔が南條さんのことを本当に好きなのかどうなのか的なことでもめているようである。
本当は盗み聞きなどよくないのだが、内容が内容だけにどうにも気になってその場を立ち去ることができない。
「風間君が好きなのは、本当は結城さんなんでしょ!?」
わわ、私!? なんでそこで私の名前が出てくるの!?
突然会話の中に自分の名前が登場し、思わず動揺する私。
そんな私の心を打ち砕くように、突然翔が声を荒げた。
「……っ、七瀬は単なる幼なじみだっ」
「そんなの信じられないっ」
「俺はあいつのこと……幼なじみ以上に思ったことなんて一度もない」
「っ!」
そんなの……そんなの、言われなくたってわかってるよ……。
翔が私のこと、幼なじみ以上に思ってないなんて、私が一番よくわかってるよ……っ
だからこそ……余計その言葉を翔の口から聞きたくなかったのに……!
胸の奥がズキリと痛み、息をすることさえ苦しい。
もちろんそんな私のことなど知る由もない二人は、更に激しく言葉をぶつけ合う。