キスから始まる方程式
「風間君が心配してるのは、いっつも結城さんのことばかりじゃないっ」
「そんなことない! 七瀬は幼なじみだからほっとけないだけだ」
「幼なじみ? 彼女の私にも見せないような笑顔、結城さんにだけは見せるのに!?」
「そ……んなこと……っ」
単なる“幼なじみ”でしかない私の、何がそんなに羨ましいの……?
南條さんの言葉に、悔しくてギリリと奥歯を噛みしめる。
南條さんは翔の『彼女』じゃない……。
無条件でいつも翔の隣にいられて……翔を独り占めできるのに……。
幼なじみでしかない私なんて、もうどんなに願っても翔のそばにいることさえできないのに……!
「じゃあ……結城さんのこと好きじゃないって言うんなら……キスして……」
「え……?」
「私達、付き合ってもう半年以上たつんだよ?
それなのに、キスだけじゃなくて一度も手さえ繋いだことないって……そんなのおかしいよね!?
恋人同士なんて言えないよね!?」
「南條……っ」
キ……ス……!?
思いもよらない南條さんの言葉に、思わず自分の耳を疑う私。
どうしようもない悲しさと悔しさで打ちひしがれた私の心に、その言葉がまるで鋭利な刃物のように更に深く突き刺さった。