キスから始まる方程式
ドクン……ドクン……
や、やだ……っ。どうしよう! 南條さんと翔がキスなんて……っ!!
発狂しそうなほどの不安と混乱が私を襲う。
全身がまるで心臓になったかのように、つま先から頭の先まで自分の鼓動がドクドクと鳴り響いた。
二人が付き合い出した時から覚悟はしてたけど……、やっぱりそんなの耐えられない!
もしかして、今から中庭に出て行けば、二人はキスしなくてすむかも……っ。
傍から聞けば、なんとも自分勝手な行動だと思われるだろう。
もちろんそんなこと、百も承知だ。
けれど、それでもどうしても翔に他の女の子に触れてほしくない。
ましてやキスなんて、想像するだけでも胸が張り裂けそうで到底耐えられなかった。
「……っ! やっぱり……キスしてくれないんだね……」
「…………」
「わかった……。もういいっ!」
「っ! ……南條っ……俺は……っ!!」
さんざん迷ったあげく意を決した私が、建物の陰から身を乗り出す。
ドクンッ
―― 翔っ!!
その瞬間私の瞳に映ったのは、立ち去ろうとする南條さんの腕をつかんだ翔が、南條さんの唇に自らの唇を重ねている姿だった……――