キスから始まる方程式


「俺がアイツのことも他の嫌なことも、全部忘れさせてやるよ」

「……うん」



あったかい……。



抱きしめてくれる桐生君の温もりが、すごく心地いい。



今まで感じたことのなかった安堵感が私を包み込む。



きっと……これでいいんだ……。


これでやっと……翔と……さよならできる……。



桐生君の大きな胸に顔を埋め、全てを捧げるように身を委ねる。


そんな私に応えるように桐生君が更に腕に力をこめ、ギュッと強く抱きしめてくれた。





やがて……



……バイバイ……翔……。



そう心の中で小さく呟く。




こうして私は、何よりも大切で、そして誰よりも大好きな翔に別れを告げたのだった……――
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