キスから始まる方程式


「これで……いいんだよね……」



意志が弱い私がすぐに封印を解いたりしないよう、入念にテープで何重にも封をする。


そして大切な物を愛でるようにひとしきり箱を撫でたあと、箱を抱えクローゼットの一番奥へと移動した……のだが……。



「……っ。……くっ……!」



途中で膝から崩れ落ち、箱を抱えたままその場にしゃがみこんでしまった。



ポタ……ポタ……



涙の雫が次々に落ち、箱の上に丸い染みを作ってゆく。


一度瞳から溢れ出したそれは、もうどうにも止めることができなかった。



「……っ、うっ……。ごめっ……。でも……最後だからっ……いいよね……っ」



座ったまま、ありったけの力でギュッと箱を抱きしめる。



「これでっ……っ……これで……もうっ……最後だから……っ」



……だから泣かせて……。



最後は声にならない声でそう呟くと、かけがえのない翔との日々を思い起こしながら、涙が枯れるまで一晩中泣き続けた……――
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