キスから始まる方程式


元気にサッカー頑張ってるんだね……。よかった……。



遠くなって行く翔の背中を見送りながら、心の中でそっと安堵し呟く。


結局あれからも翔とは一度も話すことはなかった。


親友の麻優も、今は恋人となった桐生君も、私と翔が互いに意識して距離を取っているのを薄々感じたらしく、そのことについては特に何も触れてこない。


翔のことを忘れると決めた私には、今はもう『昔の幼なじみ』として、こうして時々陰から応援することくらいしかできなかった。



「さてと! 桐生君が待ってるから早く行かないとねっ」



風で乱れた髪を、手早く手櫛でサッと整える。


今の私の気持ちを表すように翔に背を向けると、そのまま軽快な足取りで桐生君のもとへと駆けだした。
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