キスから始まる方程式


「もうすぐ春休みだろ?」

「うん」

「そしたら、七瀬ん家に遊びに行きたい」

「遊びに? 遊びに……遊びに家へ!?」



跳び上がりそうなほど驚いている私に、「んなに驚くなよ」と桐生君が不機嫌そうな声で呟く。



「ななな、何で家に!? 桐生君の家でもいいじゃん!」

「ん~……俺はべつにそれでもいいんだけどさ……」

「?」

「俺ん家だと、多分歯止めが効かなくなる気ぃするからさ……」

「は、歯止め!?」



それってば私、桐生君の家に行ったら十中八九大人なことされちゃうってこと!?

そそそそ、それは無理!!



貞操の危機を感じた私は、慌てて先程の自分の提案を取り消した。



「やや、やっぱり、うちでいいですっ」

「マジ!? やっりぃ!」



口もとをほころばせながら、嬉しそうな表情でこちらを振り向く桐生君。



うわっ! すっごく可愛い笑顔!!



そんな桐生君の無邪気な笑顔に、思わず胸がキュンとなった。
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