キスから始まる方程式
「ところでさ、なんでそんなにうちに来たいの? デートだったら外でもできるのに」
私の率直な疑問に、なんとなく照れたように鼻の頭をポリポリとかきながら桐生君が答える。
「あー……、それはだな、その……七瀬が生まれて育ってきた家を実際に見てみたいっつ~か……」
「!」
「七瀬のこと、もっと知りたいな~と」
「……っ。そっか。うん、わかった」
桐生君て超肉食系かと思ってたけど、案外純粋とゆ~か……可愛いところあるよね。
桐生君の顔をチラチラと見やりながら実感する私。
「ん? どした?」
「あっ、ううん! なんでもな~い!」
「? 変なヤツ」
「ふふっ」
新たな桐生君の一面を垣間見れたことが嬉しくて、おもわず笑みがこぼれる。
繋いでいる手にキュッと力をこめた私は「それじゃ、日にちはまたあとでね」と告げ、日が暮れてすっかり暗くなってしまった道を再び並んで歩き始めた。