キスから始まる方程式
◆大人へのステップ
翌日。
「やっぱりね~。七瀬様子がおかしかったから、絶対あやしいと思ったんだよね~」
「うっ……」
納得した表情で、お弁当のウインナーを頬張る麻優。
昨日の帰りはなんとか麻優からの追及を逃れたものの、一夜明けた今日、昼休みになった途端待ってましたとばかりに飛んできた麻優に、見事に桐生君とのキスを白状させられた次第である。
「それでさ~七瀬」
「ん?」
「他にもまだなんか隠してるでしょ」
「へっ!?」
相向かいに座っている麻優が、もぐもぐとご飯を食べながら上目遣いで鋭い視線を向けてくる。
恥ずかしくて敢えて春休みに桐生君が家に遊びに来ることは言わなかったのだが、まさかそのことにも気付くとは……。
ま、麻優って、なんでこんなに勘が鋭いんだろ……!
改めて麻優の察しのよさに感心する私。
「え~っと、特に何も……」
「う~そ!」
「っ!」
「私に隠し事しようったって、そうはいかないんだからっ」
「うぅっ……」
持っていた箸をビシッと私に向けながら、まるで名探偵さながらに私を追いつめて行く麻優。
いつもの天使な麻優からは、とても想像できない姿である。
「それで、他には何があったの?」
「えっと……その……――」
先程よりも更に鋭い目つきで穴が開きそうなほどジッと見つめられた私は、ついに観念し春休みの件についても話し始めた。