キスから始まる方程式
「―― ……ってことになったんだけど……」
「ほほ~う」
一通り話を聞き終えた麻優が、何やら愉しげにニヤニヤと笑いながら私を見つめてきた。
「え……、なに? 私の顔に何かついてる?」
「え~? いや~、私の七瀬も、ついに大人の階段登っちゃうんだな~って思って」
「っ!? おっ、大人の階段!?」
ガタンッ
麻優の予想外の一言に驚いた私は、大声を上げておもわずその場に勢いよく立ち上がった。
「なになに?」
「え~? どうしたの~?」
それと同時に一斉に私に注がれるクラスメイトの好奇な視線。
あっ……しまった。
「こ、こほんっ」
落ち着きを取り戻すため、小さく咳払いをする私。
そして何事もなかったように静かに腰を下ろした。
「ままま、麻優ってばなんてこと言うのよっ」
他の人に聞こえないよう今度は細心の注意を払い、小さな声で麻優に抗議をする。
そんな私にはおかまいなしに、相変わらずニヤニヤ顔で麻優が呟いた。