キスから始まる方程式
「あら? 七瀬。あんた顔赤いけど、そんなにこの部屋暑かった?」
「へっ!?」
ギクッ
そわそわと落ち着かない私に、突然お母さんが鋭いツッコミを入れてくる。
普段は割とのほほんとしているのに、変なところで勘が働くからなかなかの困り者だ。
「べべべ、べつに暑くないよ? あっ! もう四月だし、陽気がいいからじゃないかなぁ……」
「へ~……そう……? お母さんてっきり、七瀬と桐生君のラブラブな熱気のせいなのかと思っちゃった~」
ギクギクッ
「てへっ」とお母さんが、まるで子供みたいな笑顔でイタズラっぽく舌を出す。
「んも~っ! お母さんってば!!」
本当にそう思ってるのか、それともただからかっているだけなのか……。
「はいはい。これ以上2人のお邪魔しちゃ悪いから、お母さんはそろそろ退散しますよ~だ。
それじゃ桐生君、ゆっくりしてってね!」
そう愉しげに言い残すと、お母さんは鼻歌を歌いながら上機嫌で部屋をあとにしたのだった。