キスから始まる方程式
「…………」
「…………」
お母さんが出て行ってしまった途端、室内に重苦しい沈黙が流れる。
どうしよう……。何話せばいいかな……。
さっきすっごく中途半端なところで終わっちゃったけど……。
まさか続きしようなんて……いくらなんでも言わないよね……?
いや……でも桐生君なら、ありえなくもないかも……?
様々な思いが頭の中をグルグルと駆け巡る。
と、とりあえず何か言わないと……っ。
桐生君に変に思われちゃう!
恥ずかしくて俯いたままだった私が思い切って顔を上げようとした、その時……
「わりぃ……」
「え……?」
「ちょっと……我慢できなくて……、その……突っ走り過ぎちまった……」
突然桐生君の苦しそうな声が聞こえてきた。
慌てて顔を上げる私。
桐生君は口もとを押さえるようにしてテーブルに頬杖をつきながら、私とは反対の位置にある壁をジッと見つめていた。