キスから始まる方程式
「と、ところでさ、桐生君」
「ん?」
「なんでさっきから、壁ばっかり見てるの?」
「ばっ!? べ、べつに、壁見てるわけじゃねーよっ」
私の言葉に、驚いたように桐生君がこちらを向いて声を荒げる。
「さっきも言ったけど、これでも反省してんだよ……一応」
「桐生君……」
そうポツリと呟いて、恥ずかしそうに再びそっぽを向いてしまった桐生君。
どうやら珍しく、今日は本当に反省しているらしい。
ふふっ、なんか……可愛い……。
普段の強気な桐生君ももちろんかっこいいのだが、時々見せる照れたり拗ねたような表情の桐生君もなんとも愛らしく思えてしまう。
“母性本能をくすぐられる”というのは、まさにこういうことなのかもしれない。
そんなことを思いながらしばらく黙って桐生君の横顔を見つめたあと、私はおもむろに口を開いた。