キスから始まる方程式


「ねぇ桐生君。麻優は、私の嫌がるようなことはするなって言ったんでしょ?」

「……? あぁ……」

「だったら……その……ちょっとビックリはしちゃったけど……私、嫌じゃなかったよ?」

「七瀬……」



驚いたように目を見開いて、桐生君が視線を向けてくる。



誰もが認める意地っ張りな私だが、不思議と桐生君にだけは素直な言葉がスルスルと出てくる。


それがなぜなのかは、自分でもよくわからないのだけれど……。


でももし翔と付き合っていても、きっとこんなふうには素直になれなかったに違いない。



「だから、桐生君は私が嫌がることはしてないんだから、そんなに反省とか落ち込んだりとかしなくてもいいんじゃないかなぁ……なんて……」

「……っ」



……って私、何言ってんの!? ひぃ~っ! 恥ずかしいよ~っ!



言ってしまってから猛烈に込み上げてくる羞恥の心。
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